こちらのページでは、
2019年10月6日(日)に横浜で開催された
かいざわBassFamily コントラバス演奏会
の様子をご紹介しています。
【演奏曲目】
- ジョビン「イパネマの娘」
- エクレス ソナタ(演奏:小作 英太さん)
- グリンカ ノクターン「別れ」
- バッハ アリオーソ(演奏:早川 雄介さん)
- ピアソラ「ナイトクラブ」(演奏:益本 和代さん)
- エルガー 2つのシャンソン「夕べの歌・朝の歌」
- ピアソラ 5つのタンゴより(演奏:加地 あみこさん・加地 俊幸さん)
- ショスタコーヴィチ 5つの商品より第1番、第2番(コントラバス デュオ)
- モーツァルト メヌエット(演奏:T.Kさん)
- エクレス ソナタ(演奏:中田 依子さん)
- サン=サーンス「ロマンス」
- サン=サーンス チェロ協奏曲第1番(演奏:加地 俊幸さん)
- ドゥナエフスキー 小さな叙情的組曲(コントラバス カルテット)
- ラバト「ヴェネツィアの叫び」(演奏:甲斐澤 俊昭)
- ベリオ「Psy」(演奏:甲斐澤 俊昭)
- ラバト コントラバス協奏曲第3番(演奏:甲斐澤 俊昭)
- メリーウィドウより(演奏:甲斐澤 俊昭)
以下、動画の公開を許可いただいた方のみ
掲載しています。
次回の演奏会の出演者も広く募集中です。
詳細はこちらをご覧ください。
今回の演奏会の甲斐澤の演奏曲目については、
こちらもご覧ください。
エクレス ソナタ(演奏:小作さん)
小作さんコメント
今回の演奏会は、カルテットに充足感があり、
ソロの練習がおざなりになってしまいました。
本番一ヶ月前頃でしょうか、
やっとスイッチが入り、先生の言葉を反芻し、
弾く様子をイメージしながら、
個人練習を行いました。
本番当日の出来栄えは動画の通りですが、
次に繋がればと思っております。
甲斐澤コメント
本人は練習が不足のように書かれていますが、
長年温めてきた熟成された
聴きごたえのある演奏です。
まず音がコントラバスらしい低い倍音の成分が
鳴っているので心地よいです。
そして、弓の速度が早過ぎずに、
駒と指板の間の適切な位置を通過しようと
努めているのも見ているとわかり、
さらに高いクオリティの音を目指している
と感じます。
何より、音楽に情熱を込める姿勢が伝わり、
とてもうれしいです。
バッハ アリオーソ(演奏:早川さん)
早川さんコメント
発表に向けてレッスンでは
運指の工夫から体の使い方、呼吸法まで
様々な観点で甲斐澤先生に教わりながら
何とか当日までに形にすることが出来ました。
まだまだ満足のいく演奏には程遠かったですが
純粋に楽しかったですし、
皆さんの演奏を聴きながら1年後の発表では
歌心をもって自分らしい演奏をしたいと
目標が出来ました。
発表までの期間は学びの多い経験でした。
甲斐澤コメント
早川さんは今年の春ころに
初めてコントラバスを触れて、
今回の秋のコンサートにはもちろん初登場です。
半年と少し、しかも多忙な仕事の合間の休日に
練習場所を借りて練習したそうです。
動画で見ると、基本的な奏法を忠実に守り、
しっかりとした低音域を鳴らしているのが
わかります。
そのこと以上に、
早川さんが元々お持ちの音や音楽のイメージが
上質で明確なものである、ということが
短期間で内容の伝わる演奏を可能にしている
と思います。
ピアソラ「ナイトクラブ」(益本さん)
益本さんコメント
『タンゴの歴史』は、もともと
フルートとギターのために書かれた曲です。
「ナイトクラブ1960」は憧れの曲でしたが、
今回実現するまでに
実は何度も挫折しております。
印象的だったのは、レッスン中に先生が
動画を撮ってくださったこと。
自分の演奏を客観的に振り返った時、
あまりの酷さに驚き…
結果、
難しい箇所をがむしゃらに練習するよりも、
ゆっくりの部分をきちんと鳴らせるように
練習配分を見直しました。
フィンガリング、フレーズ感や
グリッサンドのスピード分析等、
先生のアドバイスで唄い方が明確になり、
迷いが一つずつ解消されていきました。
私にとってかなり無茶な選曲だったし、
速度も本当はもっと上げたかったです。
でも長年やりたかった曲がやっと弾けて
本当によかったと思っています。
甲斐澤コメント
見事な演奏です。
まず、姿勢がいいです。
エンドピンの長さ設定が適切
ということもあるので、
楽器と身体の軸がほとんどぶれません。
それもあってか、
ソロチューニングにもかかわらず、
それぞれの弦の倍音の基音となる要素の音が
聞こえてくるのが録音でもわかります。
あと、本人も
テンポをもう少し上げたかったと書いてますが、
これは難しい部分を確実に弾くために
少しだけ安全なテンポにしたためだと
思われます。
動画で見ると早い箇所もきちんと聞こえるので、
次回この曲をやる時は是非テンポ上げて、
さらにノリノリで弾いてください。
難しい箇所が多少音が抜けたとしても
音楽には影響しないと思います。
それから、中間部と終わりの方にある
ピアノと一緒のグリッサンドの行き先が
ピアノとタイミングがぴったりで
とても気持ちいいです。
ピアソラ「5つのタンゴ」より(加地夫妻)
加地さんコメント
ピアソラの小品からの抜粋で3曲演奏しました。
ピアソラは1900年代を生きた作曲家ですが、
当時単に踊りの伴奏だったタンゴに、
クラシックやジャズのテイストも取り入れて
独自の音楽を創り出した人と言われています。
これまで私たち取り組んできたクラシックとは
かなり雰囲気が異なるものでしたが、
その独自の世界観を表現できればと、
練習を重ねました。
甲斐澤先生には特に、
曲全体の構成を踏まえた味つけや
バランスについてアドバイスをいただき、
本番は楽しんで演奏する事ができました。
甲斐澤コメント
絵になる演奏です。
まずは、あみこさんのヴァイオリンの音色に
耳がいきます。
イタリアの名器を思わせる明るさと艶に、
さらに磨きがかかり魅力的です。
そして、
加地さんのあらゆる意味で正確なサポートと、
ご夫婦ならではの緻密なアンサンブルにより、
全く隙のないパフォーマンスを
繰り広げています。
なにより驚愕すべき点は、
加地さんの暗譜演奏です。
ソロでの主旋律は練習を重ねると
自然に頭に入るものですが、
このデュオのように伴奏形が主な場合は
余程意識的でないと覚えることはできません
(私の場合は)。
もしかしたら、加地さんにとっては
何でもないことかも知れませんが、
暗譜するほどの高い意識のサポートにより
万全の合奏を生み出してるともいえます。
モーツァルト メヌエット(演奏:T.Kさん)
T.Kさんコメント
誰もが聴いたことのある名曲です。
初ピアノ合わせが終わった後、
門下生からの「モーツァルトもびっくりだねー」
との声掛けに、本当にそうだなあと思いました。
レッスンではハイポジションで指を十分に開いて
音程を正確に取るように、
マクティアのデイリーエクササイズの1番を
繰り返し練習するように教えていただきました。
本番は、あがってしまい、
指がもつれて音がずれたり、
指が十分に開かず音程がずれたり、
早い箇所で隣の弦を弾いたり…。
ただ、振り返ってみると、あがった割りには、
弓を持つ手にいつもより力が入らず
最後まで弾けたように思いました。
また、早いパッセージの箇所で、A線やE線の
ハイポジションを使うフィンガリングを
先生に教えていただき、太い弦を使用して
普段鳴らさない音を出していた効果なのか
楽器がよく鳴るようになった気がします。
モーツァルトの曲を弾いたことは
自分にとっては大きなことで、発表会の後も
懲りずに練習で弾いて楽しんでいます。
最後に。モーツァルトさん、
びっくりさせてごめんなさい。
甲斐澤コメント
本人はあがってしまい、と書いていますが、
それにしては、弾く姿勢が全くブレないのは
驚異的です。
T.Kさんはコツコツと練習を積み重ねる
非常に努力家です。
そして、私の指導を驚くほど素直に受け入れ、
忠実に守ってくれます。
今回の演奏では難曲で苦労されているのが
伝わりますが、それは選曲も含めて全て
私の指導力不足のせいです。
エクレス ソナタ(演奏:中田さん)
中田さんコメント
学生時代に遊びで弾いていて、
でも最後まで弾くことが出来ずにいた曲に
挑戦してみました。
レッスンでは、フィンガリングはもちろん、
音の出し方や弓の使い方、
歌い方など細かいところまで、
丁寧に教えていただき、
自分なりに目標とする演奏をイメージしながら
練習に取り組むことができました。
本番は、とっても緊張していたので、
理想とするイメージとは
少し違う感じの演奏になってしまいましたが、
それでも、久しぶりの発表会という緊張感の中、
ピアノの石田先生のお力添えをいただきながら、
無事に最後まで弾くことが出来、
とても満足しています。
ありがとうございました。
甲斐澤コメント
しっかりと
コントラバスらしい良い音を鳴らそう、
という強い意志の感じられる演奏です。
曲が進むにつれて
さらに楽器が良い音で鳴りだすのが、
録音でも伝わってきます。
長年温めてきた曲を
今回のためにかなり練習されて弾いた、
という情熱が音に乗っていて
胸に迫ってくるものがあります。
自分の経験からいうと、
エクレスのソナタのように、
最初に伴奏に前奏がなく、
いきなりコントラバスから始まるのは、
メンタル的に落ち着くまでに時間がかかります。
私の解決策としては、
始める前に少し間をとり客席を見ることで
かえって落ちつきを得ることができます。
それはさて置き、
初めてのこの会の出演でこれだけ演奏する
というのは称賛に値すると思います。
サン=サーンス チェロ協奏曲第1番(加地さん)
加地さんコメント
サン=サーンスがチェロのために書いた協奏曲は
2曲ありますが、今回はよく演奏される1番の方を
演奏しました。
昨年より取り組んでいた五度調弦
(下からC-G-D-A、チェロの1オクターブ下)
をさらに五度上げた調弦
(下からG-D-A-E、ヴァイオリンの2オクターブ下)
として、チェロの高音域に対応しています。
チェロと同じ音域を弾いても、
音色はチェロとは違い、
一方で通常のコントラバスの音色とも異なり、
新しい楽器を弾いているような感覚でした。
この曲には沢山の印象的な旋律が登場しますが、
そのそれぞれについて、甲斐澤先生にいただいた
歌い方へのアドバイスを元に練習を重ねました。
甲斐澤コメント
加地さん研究の調弦により。、
新しい楽器の出現に立ち会う思いです。
その調弦が考え抜かれた末のものだ
ということが動画でもよくわかります。
そして、
見た目には難しいことをやっているのでは
ないように思わせるような涼しげな表情や動作が
かえって凄いです。
右手の弓の使い方の配分や
左手のシフティングにも無駄がないので、
シンプルに易しげに見えるのかもしれません。
テクニカルな部分は全く申し分ないと思います。
これで、カンタービレの部分に
ロマンが感じられる粘りのような要素が
少しだけ加わったら、常人には手が届かない
更に高い次元の音楽になると思います。
次回の独奏演奏会の出演者も広く募集中です。
詳しくは以下のページをご覧ください。