こちらのページでは、
2018年10月21日(日)に横浜で開催された
かいざわBassFamily コントラバス独奏演奏会
の様子をご紹介しています。
【演奏曲目】
以下、動画の公開を許可いただいた方のみ
掲載しています。
次回の演奏会の出演者も広く募集中です。
詳細はこちらをご覧ください。
チャイコフスキー ノクターン(益本さん)
益本さんコメント
この曲を初めて聞いたのはチェロの演奏で、
いつかやれたらいいなぁと
気長にコントラバス用の楽譜を探していました。
移弦ではなく同じ弦上で跳躍するのが難しくて
だいぶ手こずりました。
甲斐澤先生の弾くロマンティックな跳躍とは
ほど遠いですねぇ。
難易度は低いものの…緊張して危なっかしいし、
自分が思ったようには弾けませんでしたが、
伴奏の原田先生の感性に助けられて
なんとか乗り切れたと思います。
甲斐澤コメント
見た目も音も大変安定している演奏だと思います。
特に楽器を動かさずに固定して弾いている面では
指導する側の私を超えています。
益本さん自身も書いてますが、左手は敢えて
リスクを伴う同じ弦上での跳躍を選んでいます。
その方が歌う味わいがより増す効果があるのを
よく理解されているからです。
さらに効果を上げるには、
上半身の脱力がより必要になると思います。
安定感の上に脱力が加わるとますます表現の幅が
広がるので、今後にも大いに期待できます。
ヘンデル/ハルヴォルセン「パッサカリア」(加地夫妻)
加地さんコメント
ヘンデル作曲の主題に着想を得た、
ヴァイオリニスト ハルヴォルセンによる変奏曲。
もとはヴァイオリンとヴィオラのための曲で、
ヴァイオリンとチェロでもよく演奏されますが、
今回はコントラバスと組み合わせる事により、
全体により深みを持たせる事を目指しました。
最初に提示される主題を元に、変奏曲形式で、
弦楽器の様々な技巧を混えたヴァリエーションが
続きます。
各々のヴァリエーションの個性を際立たせるよう、
先生のアドバイスに基づき練習を重ねました。
甲斐澤コメント
まさに絵になる演奏です。
弦楽器のみの二重奏はどうしても単調になりがち
ですが、全くそういったことを感じさせない
隙のないパフォーマンスです。
もちろん曲自体が
工夫に富んだ書かれ方をしていますが、
ご夫婦ならではの密度の高いアンサンブルで、
その創意がよく生かされています。
短い音符で掛け合う所は早口の会話のようだし、
重音の所は教会でのオルガンの響きを思わせて、
とても味わい深いです。
ボッテジーニ「グランドアレグロ」(青木さん)
青木さんコメント
今回演奏したグランド・アレグロは、
ボッテジーニの楽曲の中でも最も好きな曲の一つで
いつか演奏したいと思っていました。
大曲であり技術的にも難曲でしたが、
年に一度の発表会、
いつかではなく弾きたいと思った時に弾こう!
と今回挑戦することにしました。
譜読みは早い段階で始めたものの、
5月から8月までの4ヶ月間は身体上の事情で
全く楽器が弾けない状態となり、本当にこの大曲で
臨めるのかとても厳しい状況でしたが、
演奏曲を変えて一年先送りする選択は
したくありませんでした。
リハビリから再開して何とか目標通りに
発表会での演奏を実現できて本当に良かったです。
限られた短い期間での準備や、
楽器を弾けない時でも行える暗譜のための
イメージトレーニング方法など、試行錯誤しながら
得られた収穫もたくさんありました。
今回は発表会に間に合わせるのが
やっとになりましたが、
もっと完成度を上げて素敵に演奏できるように、
これからも弾き続けて行きたい曲です。
甲斐澤コメント
この超絶技巧の大曲をそのような事情で
直前の短期間でここまで仕上げたことを
ご自身のコメントで知り、大変驚きました。
基本的な演奏能力が非常に高い
青木さんならではの技だと思います。
それと同時に、楽器に触れずにできる
イメージトレーニングの大事さが証明できる
好例にもなっています。
そして、今回の演奏では青木さんが最近購入された
という楽器が使用されています。
一聴して、この楽器の持つ音の素晴らしさを
確信しました。
この動画でも伝わるように、
核となる響が大変太く豊かです。
常々、弦楽器奏者は所有する楽器も
能力の一部と思っています。
ボッテジーニ「エレジー」(T.Kさん)
T.Kさんコメント
初めてボッテシーニの作品に取り組みました。
エレジーという曲名の通り、誰かを懐かしむような、
優しさから激しさまで様々な曲想がちりばめられ、
それを幅広い音域を駆使して演奏します。
レッスンでは、
テンポ、弓の位置、高音から低音に移動した時の
指の開き、伸ばす音の方向や響きなどの基本に
常に立ち返りながら、曲の持つ歌をどう表現するか
を教えていただきました。
本番直前はテンポが定まらない箇所があり、
弓の位置や角度、弦との噛み合わせを鏡で再確認し、
本番ではピアノの先生の力も貸していただき、
なんとか、また一つコントラバスの名曲を
自分なりに演奏することができました。
甲斐澤コメント
T.Kさんさんは今年も難曲に挑戦しています。
コントラバスに関わる人なら誰でも知っている名曲で
私もボッテジーニの作品中では最も好きな曲です。
今回もじっくり時間をかけて作り上げてきたので、
姿勢のブレがなく真っ向から直球勝負の演奏です。
良くも悪くもハッタリがありません。
何箇所かフラジオレットの難しい箇所も
きちんとはまっています。
これに緩やかなビブラートが加わると
更に味わいの深い音楽になると思いますが、
T.Kさんらしい誠実な演奏です。
シューマン「アダージョとアレグロ」(加地さん)
加地さんコメント
シューマンがホルンのために書いた名曲です。
コントラバスでの演奏で、
また別の魅力を引き出せればと思って取組みました。
楽器のセッティングですが、
通常この楽器は4度間隔の調弦であるところを、
5度間隔にしています。
こうする事で音色はより明るく好みのものとなり、
ソロへの取組みがさらに楽しいものとなりました。
今後もこの演奏会で、
様々な挑戦を続けていければと思います。
甲斐澤コメント
実に鮮やかな演奏です。
加地さんが弾くとこの難曲も容易そうに見えます。
確かにこの調弦だと明るい音色になっています。
このようなチャレンジも加地さんならではで、
毎回とても感心しています。
そして、この演奏でもピアノの原田先生の
名サポートぶりが光っています。
特にアレグロのスピード感の中での陰影のつけ方は
鳥肌ものです。
加地さんの音楽が、より立体的に出現しています。
パガニーニ「モーゼファンタジー」(甲斐澤)
甲斐澤コメント
自分が20代の頃に、ゲーリーカーの演出たっぷりの
パフォーマンスで出会った曲です。
まさか63歳になってから弾くとは
夢にも思いませんでした。
自分の持ち味とは真逆の
技巧的で少しコミカルなこの曲を、
どこまで表現できるか知りたくて選びました。
出来るだけ指板を見ずに顔が正面を向いたまま
演奏するのをこの頃の課題にしてますが、
あまり出来てません。
コダーイ「アダージョ」(甲斐澤)
甲斐澤コメント
コントラバス用にアレンジされ、
最近出版されたことで知った曲です。
取り組んでみて、やはり歴史に名を残す
大作曲家の音楽だな、と思いました。
最初から最後まで、
音楽に明らかにストーリーがあります。
これを自分の人生の体験と重ねていくと、
曲に深く入り込んでいく気がしました。
この曲の核心は後半でピアノがハープの様な
アルペジオ奏でる上に、最初の旋律を
一オクターブ上げて弾く部分だと思っています。
高音域ゆえに困難になりますが、
今回の演奏では音程が甘すぎです。
今後は引き続き精度を上げていこう、
と決めています。
マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」(甲斐澤)
甲斐澤コメント
オーケストラ在団中に
数えきれないほど数多く演奏した曲です。
演奏したと言っても、オリジナルは
オルガンが入るのでコントラバスは全休。
オルガンがない場合に
アレンジされたペダルトーンを弾くだけです。
旋律を弾くのは今回が初めてになります。
この曲ではあえて移弦をせず、シフティング
によりA線1本のみで弾くことにしました。
それによって、
より歌う効果が出ると思ったからです。
動画を見ると、シフティングにかかる
時間を埋めることを意識しすぎ、
テンポが思ったより前向きになりすぎて、
呼吸の浅い演奏になっています。
次回の独奏演奏会の出演者も広く募集中です。
詳しくは以下のページをご覧ください。